2015年7月29日水曜日

高大連携歴史教育研究会結成の呼びかけ


 2006年秋に高等学校で世界史未履修問題が表面化して以来、高等学校の歴史教育のあり方をめぐって様々な意見が表明されてきました。その中では、大学入試が高等学校の歴史教育に大きな影響を及ぼしているため、大学と高等学校の教員が一緒に率直な意見交換ができる場の必要性を指摘する意見も多くみられました。

 2014年夏には、日本学術会議高校歴史教育分科会、日本歴史学協会歴史教育特別委員会、高等学校歴史教育研究会の3者による高等学校の歴史教育と大学入試に関係するアンケート調査が実施され、2ケ月という短期間であったにも拘わらず、700名近い回答が寄せられました。その3分の2は高校教員、3分の1は大学教員でした。つまり、高等学校や大学の歴史教育のあり方に関して、高等学校と大学の壁を超えて多くの方が強い関心を寄せられていることが明らかになったと思います。このアンケート結果は多くのマスコミでも詳しく報道され、より広い社会的関心も呼んだと思います。

 その上、2019年からは「高等学校基礎学力テスト」が、2020年にはセンター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」の導入が予定され、各大学の個別試験の多様化なども提案されています。また、初等中等教育の教育課程に関しては、全教科におけるアクティヴ・ラーニングの実施や「日本史の必修化の扱いなど地理歴史科の在り方」の検討が、2016年度中に行われるといわれています。まさに、これから数年間で高校教育のみならず、大学入試の大きな改革が予想されるだけに、歴史教育分野においても、高等学校や大学の壁を超えた討論によってより建設的な案の検討が必要になると思います。また、大学教員の間でも、専門的に歴史研究をしている研究者が多い人文系と、教育現場の状況に詳しい研究者が多い教育系との交流の必要性が以前から指摘されてきました。

 このように高等学校と大学間、大学内の学部間などの壁を超えた対話の必要性が一層高まる一方で、近年、全国各地では高大連携により歴史教育の改善をめざす研究会が発足し、高校教員むけの夏期セミナーを実施したり、教育実践の交流を行ってきています。これらの成果を全国的に共有することも重要になっていると思います。勿論、歴史教育に関してはすでに多くの全国的学会や研究会が存在していますが、それらは高校教員と大学教員が別々に参加している場合が多く、高大連携の全国的な研究会を立ち上げる意義は十分あると考えています。その際、新しい全国研究会は、各地の研究会の成果を年1回の大会やインターネットなどを通じて、交流し、成果を共有するとともに、必要に応じて改革案の提案を行うなどの形で、各地の地域別研究会と協力関係をもってゆくことが大切と思います。

 そこで、この機会に大学や高等学校の壁を超えた「高大連携歴史教育研究会」を発足させ、歴史教育実践の交流や意見交換を恒常化させ、必要な改革提言をまとめていったらどうかと考えました。具体的な課題としては、①高等学校の世界史・日本史教科書改革と思考力育成型授業のあり方、②各地の教育実践や史料集作成などの交流とデータベース構築、③高等学校における歴史系新科目のあり方、④大学入試・高校新テストなどの検討や歴史系出題のあり方、⑤大学における歴史系の教養教育や教員養成課程のあり方、などが考えられます。これらの課題ごとに部会を設置し、意見交換を進めていったらどうかと考えています。また、近年は歴史教育の分野でも諸外国との国際交流が活発になっていますので、この研究会でも国際交流を重視する必要があると考えています。

 いろいろご多用とは思いますが、ぜひこの「高大連携歴史教育研究会」の結成に賛同いただき、参加してくださるように心から呼びかける次第です。


2015514

呼びかけ人一同

北海道: 赤間幸人(北海道教育庁)、臼杵勲(札幌学院大)、中村和之(函館高専)、長峰博之(北嶺中高)、橋本雄(北大)、吉嶺茂樹(有朋高通信制課程)

東北: 今野日出晴(岩手大)、篠塚明彦(弘前大)、安達宏昭・小田中直樹・芳賀満(東北大)、池田実(仙台工業高)、小林康一(仙台二高)、千葉博幸(仙台一高)、手代木章宏(仙台二高)、兵藤研(名取北高)、高橋徹(山形南高)

関東: 内木裕(栃木県立石橋高)、澁谷浩一・深澤安博(茨城大)、岡崎賢治(元茨城県立高)、伊藤純朗・国分麻里(筑波大)、前嶋匠(茗渓学園高)、澤邉和浩(千葉県立木更津高)、杉山清彦・外村大・羽田正・姫岡とし子・吉澤誠一郎(東大)、三谷博(跡見学園女子大)、戸川点(都内定時制高)、笹川和則(都立清瀬高)、皆川雅樹(専大附属高)、金井光太朗・小松久男・篠原琢・鈴木茂(東外大)、日高智彦(成蹊中・高)、加藤健(都立墨田川高)、木村茂光(帝京大)、赤城隆治(日歴協)、大木匡尚(都立農業高)、君島和彦(東京学芸大名)、小嶋茂稔・坂井俊樹(東京学芸大)、小澤実・長谷川修一(立教大)、近藤孝弘・近藤一成(早稲田大)、野々瀬浩司(慶応大)、小浜正子(日本大)、木畑洋一(成城大)、南塚信吾(世界史研)、近江吉明(専修大)、松本通孝(元青山学院高等部)、割田聖史(青山学院大)、小塩和人(上智大)、高田幸男(明治大)、貴堂嘉之・中野聰(一橋大)、茂木敏夫・油井大三郎(東京女子大)、成田龍一(日本女子大)、大門正克(横浜国大)、皆川みずゑ(近現代史教育研)、石橋功(神奈川県歴史教育研究会)、澤野理(神奈川県立大師高)、佐藤雅信(神奈川県立横須賀大津高)
                          
中部: 竹田和夫(新潟県立新発田高)、大串潤児・久保亨(信州大)、小川幸司(長野県立高校)、松井秀明(静岡県立浜松西高)、今村直樹・岩井淳・戸部健(静岡大)三田昌彦(名古屋大学)、加藤史朗(愛知県大名)、藤本博(南山大)、磯谷正行(愛知県世界史教育研究会)、土屋武志・船尾日出志(愛知教育大)、浅野伸一(岐阜県立岐山高)、冨澤要樹(三重県立上野高)
    
近畿: 永原陽子・服部良久(京都大)、原田敬一(佛教大)、武島良成(京都教育大)、中村薫(同志社大講)、川島啓一(同志社高)、後藤誠司(京都市立日吉ケ丘高)、堀江嘉明(京都府立高)、本郷真紹(立命館大)、今宿純男(立命館教育研究・研修センター)、八木誠(立命館宇治高)、秋田茂・飯塚一幸・堤一昭・中村翼・桃木至朗(大阪大)、杉谷眞佐子(関西大名)、鵜飼昌男・矢部正明(関西大中高)、清真人(近畿大)、髙橋昌明(神戸大名)、山崎健(神戸大)、勝山元照(神戸大附属中等教育学校)、原田智仁(兵庫教育大)、置村公男(六甲学園中高)、井野瀬久美恵(甲南大)

中国・四国: 丸橋充拓(島根大)、岡本弘道(広島県立大)、宮本英征(広大附属中高)、南雲泰輔(山口大)、磯部賢治(山口県立豊浦高)、藤村泰夫(山口県立宇部西高)、福田喜彦(愛媛大)、梅津正美(鳴門教育大)、山本雄一郎(香川県立丸亀高)

九州・沖縄: 清水和裕(九大)、池上大祐・星乃治彦(福岡大)、井口由布(立命館アジア太平洋大)、鶴島博和(熊本大)、平井英徳(熊本県立熊本北高)、牛嶋秀政(熊本県立熊本高)、武井弘一(琉球大)

  
以上、大学関係86名、高校関係42名、合計128
なお、各所属末尾の名は名誉教授を、
講は非常勤講師を意味し、元は退職前の職場に追加した。